僕はLEICA D-LUX5を所有している。
パナソニックのDMC-LX5の兄弟機であり、同シリーズ最後のCCDイメージセンサーを搭載したコンパクトデジタルカメラだ。
今では稀にしか撮影することはないが、やはりCCDの発色は良い。
CCDはイメージセンサーメーカー大手のソニーが製造を終了して久しく、2025年現在では一部のメーカーが産業用に少量を生産しているのみといった状況である。
そのため、民生用をはじめとした写真撮影や映像撮影の用途では完全にCMOSに置き換わった状況だ。
今回は、古き良きCCDイメージセンサーと、CCD時代の末期である2010年10月発売のCCDイメージセンサーカメラLEICA D-LUX5について記録しておく。
まず最初にイメージセンサーとしてのCCDとCMOSの機能の違いについてまとめておく。
CMOSに有り、CCDに無い機能
・ROI(Region Of Interest)
指定した任意のエリアのみを転送する方式。これによりフレームレートが高速化される。主に1920×1080や3840×2160などの動画記録の際に使用される転送方式。
・サブサンプリング
画素の読み飛ばしを行う転送方式。通常はベイヤー配列のRGB情報を失わないように2の倍数の値を読み飛ばす。撮像面積全体を高フレームレートで転送できるため、主にライブ映像をEVFやモニターに表示する際に使用される。
・ビニング
複数のピクセルをひとつに結合して転送する方法。例えば、2×2では4画素を、3×3では9画素を1ピクセルとして転送する。
次に、CCDイメージセンサのデメリットは下記のとおり。
CCDのデメリット
・読み出し及び転送速度が遅い
隣接する素子へと順に電荷を転送していき最後に全画素をまとめてひとつのアンプで増幅する仕組みのため、処理速度が遅い。しかも、転送を速めるために高い電圧をかけると電荷が飛散してしまうため高速化出来ない。
・構造上、スミアなどのノイズが生じる
強い光を受光した場合、電荷が異常に増幅してしまう。CCDは隣接する素子に電荷を渡して転送していくが、この際に大きすぎてあふれた電荷が転送路に漏れ出すことがある。漏れ出した電荷は正常な電荷と一緒にすべてまとめて増幅器を通り電気信号に変換されるため、漏れ出した電荷がライン状のノイズとして発生する。これがスミアである。
スミアはCCDからの出力信号に乗って現れる現象のため、ノイズキャンセルなどの処理で取り除くことが出来ない。
最後に、CCDイメージセンサーのメリットは下記のとおり。
CCDのメリット
・グローバルシャッタ動作
全画素を一度に露光する方式。高速で移動する対象物でも歪み(ローリングシャッタ現象)が発生しない。
・全体の発色が均一
CMOSイメージセンサーはひとつの画素ごとにアンプがあり、高速で水平方向のライン順に読み出していく。そのため、アンプの個体差による微妙なバラツキが画素ごとに生じるが、原理的にスミアが発生しない。
対してCCDイメージセンサーは全画素を一度に露光し、最終段ですべての画素をひとつのアンプで増幅する。従って、すべての画素において色の傾向が一定となる。このような読み出し構造であることから、CCDには原理的にROI、サブサンプリング、ビニングの機能が無く、露光方式がグローバルシャッターとなっている。
つまり、それぞれのイメージセンサーにおける動作の違いは、画素情報を増幅する仕組みの違いによって生じる。
まとめると下記のとおり。
CCD
全画素をひとつのアンプで信号を増幅して転送するため、全画素をひとつの情報として扱うことしかできない。従ってグローバルシャッターとなり、ROIなどが出来ない。
CMOS
1画素にひとつずつアンプがあり、画素ごとに信号を増幅するため画素単位で制御が可能。従ってアンプの個体差に由来する画素ごとの微妙なバラツキが発生する。また、全画素同時転送のグローバルシャッター化が困難である。
資料っぽくなってしまったが、このような違いがある。
現代のカメラのように、静止画と動画の両方を高品質に撮影するためのイメージセンサーとしては、残念ながらCCDは適さないのである。
なお、LEICA D-LUX5にも動画撮影機能があるが、解像度が720pであり、非常に貧弱だ。恐らく全画素を取り込んだ後に、カメラ内部の映像処理エンジンで720pにトリミングし、動画ファイル化してから保存していると思われる。
かなり強引な方法の影響か、得られる動画はそれほど高品質ではない。あくまでもオマケの域を出ない機能である。
しかし、静止画撮影の品質はかなり高い。
レンズの品質も高いせいか、気持ちの良い発色が得られる。
僕のLEICA D-LUX5はチタンカラーだ。ボディの表面にチタンアルマイト加工がされている日本で1000台の限定カラーである。
購入価格は115,500円(!)。税別11万円プラス消費税5%である。コンパクトデジタルカメラとは言え、ライカの限定モデルが新品でこの価格で買えるとは、2025年現在では考えられない。
発売前にヨドバシカメラで予約して購入した。僕にとって初のライカである。
パナソニックのOEMであることはもちろん知っていたが、敢えてライカを選んだ。
理由は下記の2点。
まず、オッサンだからなのか、僕の中ではLUMIXブランドは浜崎あゆみ氏のイメージが強くあり、LUMIXイコール女性向きという印象が強い。LUMIXのLマークの金バッジも女性向けを意識したものという印象がある。
それにもかかわらず、LEICA D-LUX5の兄弟機であるDMC-LX5はやたらと武骨なデザインだった。
それでいてLUMIXロゴとLマークの金バッジがあるため、デザインとブランドイメージがちぐはぐな印象を受けた。
カメラとしては素晴らしくまとまっていると思うが、僕には受け入れられなかった。
2点目の理由は、やはりライカへの憧れだった。
どうせなら良いものを買いたいと考えていた。長く使っていきたい、現役を退いても手元に置いておきたいものを選びたいと考えたときに、スペック表に現れない魅力を得たかった。
金額は障壁にならなかった。貯蓄を知らない性格なのだが、なぜか手元に用意があった。
ここでLUMIXを選択すれば、同じ金額でもEVFをはじめとした様々なオプションや予備のバッテリもひととおり以上揃えることが出来ると考えていたが、ライカブランドの魅力が勝った。
今も変わらない考えなのだが、写真はカメラ本体よりもレンズに大きく左右されると考えている。
当時、リコーのGR DIGITAL IIIを所有しており、その優秀なレンズに強い関心を持っていた。
今度は優秀なズームレンズを搭載したカメラが欲しくなり、候補として、キヤノンのPowerShot G12、リコーのGX200、同じくリコーのCX3、そしてパナソニックのDMC-LX5を挙げた。
いま見返してみると、CX3以外はCCDイメージセンサーのカメラであるが、この次のモデルはすべてCMOSイメージセンサーになっている。
この中でGR DIGITAL IIIと同じブランドであるGX200とCX3は外した。
PowerShot G12も良かったが、キヤノンはみんなが持っておりマジョリティになりたくないという安易な理由で外した。
こうしてDMC-LX5へと決まったが、ふとレンズにLEICAとあったため、調べたところLEICA D-LUX5を見つけた。
その後の顛末は前述のとおり。
なお、GR DIGITAL IIIは既に手放してしまったが、これもCCDイメージセンサーを搭載したシリーズ最後のカメラだった。
描写力の高さはもちろん、使い勝手も良く、どこをとっても一流のカメラだった。
LEICA D-LUX5で久しぶりに撮影してみた。
やはりCCDの発色は良い。
しかし、現代ではもう製造出来ないと思う。技術は残していると思うが設備が既に無いだろう。
LEICA D-LUX5は、CCD時代末期のカメラである。
言い換えると、最も進化したCCDイメージセンサーを持つカメラのひとつであるとも言える。
これからも大切にしていきたい。