僕は新潟県の出身だが、現在は首都圏に住んでいる。
新潟の冬は非常に湿度が高く、気温の低さと相まって肌に突き刺さるような刺激のある寒さを感じる。
首都圏の冬は新潟とは真逆で、こちらは乾燥が非常に厳しい。
1か月以上まとまった雨が降らず、空はほぼ晴天であり曇天になることは稀だ。
新潟で生まれ育ったせいか乾燥に弱い肌で、首都圏の冬では保湿クリームが欠かせない。
油断すると笑った時に唇が割れるし、食事の際には口角が裂けないように注意している。指先や爪もささくれて痛いし、かかとは紙ヤスリの様にざらついて靴下を破る。
肌が乾燥すれば、心も乾燥する。
それ故、冬はコントラストが低めの乾燥した写真になってしまうのだろうか。

こんな冬に対して、夏の写真はコントラストが高めだ。
梅雨の時期は新緑が美しく空気もしっとりとしているので、コントラストを高めに現像するのが楽しい。
梅雨が明けて本格的に夏に入ると、木々や花々は青々としてくるし、夏の青空と白い雲はコントラストを高めればそれだけで絵になる。
首都圏の冬も青空が広がるが、雲がほとんどない。
木々も寂しく、葉は枯れ落ちており昆虫もいない。
せめて積もらない程度に雪が降ってくれればよいのだが、何もないと被写体として寂しい。
冬は花も緑も少ないため露出オーバーな部分が少なくなりがちだ。
ならば、露出アンダー部分のコントラストを丁寧に調整していけば良い。
すると乾燥した表現出来て冬らしい趣のある写真になる。
コントラストを下げると、露出アンダーの色調が豊かになる。
JPEG撮って出しの画像では黒つぶれしていても、RAWデータを見ると実は多彩な色が埋もれており、レンズの波長分解能の高さとカメラの描写性能の高さに感心する。
僕のカメラはRAWデータで各色14bitの色情報を取得する。
RとGとBの合計で4,398,046,511,104(4兆3980億)となる。
撮影した写真は最終的にJPEG画像の各色8bitになるため、色の数は16,777,216(1677万)色に置き換わるのだが、元データの4兆3980億色から好みの1677万色を選べるのだから、その写真に最も適した色を表現することが出来る。
コントラストが低い写真は退廃的なイメージを連想するが、僕にとってはそんなことは無く、むしろ撮影に対して開放的になる。
皆様も冬のスナップ写真を現像するときは、コントラストを低めに調整してみて欲しい。
そこには目で見た記憶の色とはほんの少し違う色の世界があるはずだ。

では、冬の写真はコントラストを上げることはないのか?
そんなことはない、コントラストを上げて現像する写真もある。
むしろ、コントラストをガンガン上げて追い込みたい写真がある。
それはマジックアワーである。
首都圏の冬は雲が少ない影響で開けている場所では空が良く見える。
更に寒さで空気が澄んでいるため夕暮れに美しいマジックアワーが発生する。
この極上のグラデーションを見ると、各色14bitとは言わず15bit(35兆色)でも16bit(281兆色)でも欲しくなってくるし、寒くても撮影に出掛けたくなってくる。
新潟の冬は毎日曇っており、空が見えることはほとんどない。
新潟の「晴れ」とは空模様を指しているのではなく「雨も雪持っていない状態」を意味している。今にも落ちてきそうな曇天でも何も振っていなければ「晴れ」なのだ。
そのため、首都圏ような冬の空は新潟では見ることが出来ない。
東京駅から新幹線で1時間半も乗れば新潟県の長岡駅に着く。
こんなわずかな距離にも関わらず、ここまで空模様が一変するのだ。
まるで異世界を行き来している気分になる。
日本の狭さと広さを同時に感じるな。
