ダストリダクション機能とは、カメラメーカーにより名称は若干異なるが、CMOSイメージセンサーの表面に付着したダストを振るい落とす機能である。
CMOSイメージセンサーの手振れ補正のメカニズムを使用し、ブルブルと振動して振るい落とす。
以前所有していたカメラにこの機能が搭載されていたのだが、手放すまでの4年間で使用した回数は10回も無かった。
無意味だと感じたし、実際には問題無いのだろうがカメラへの影響が恐くて使うことにためらったのだ。
今回はダストリダクション機能の不要論を解説したい。
CMOSイメージセンサーの表面はカバーガラスで覆われている。これは通常は取り外すことが出来ない構造になっており、マイクロレンズやフォトダイオードなどを保護している。
CMOSセンサーに異物が付着するというのは、カバーガラスの表面に異物が付着したことを指す。
カバーガラスに異物が付着していると撮影画像に異物が影となって表れるため、当然ながらその部分は受光出来ておらず写真にとっては害でしかない。
この異物とは、空気中の小さなホコリやチリ等であり、多くの場合レンズを交換する際に付着する。
従ってレンズ交換式カメラではCMOSイメージセンサーの異物付着は避けられない問題だ。
それを回避する方法のひとつにダストリダクション機能がある。
カメラにより搭載しているものとそうでないものがあるが、現在発売されているカメラには搭載されているモデルの方が多い。
前段でも述べたが、ダストリダクション機能とは物理的にCMOSを振動させて異物を振るい落とす仕組みだ。
僕はこれがとても怖い。
もう20年以上昔の話になるが、ソニー製のCCDセンサーでワイヤーボンディングが破断するトラブルが世界的な話題となった。
ボンディングはイメージセンサー内部の配線であり、これが切れてしまうことが問題になた。
当然ながら切れてしまうと信号が正しく流れないため、動作不良となる。
切れたら繋ぎなおせば良いではないか、と思われるが、これが超細かいため目には見えるが手で修復が出来ない。
そのため、ボンディング不良のCCDセンサーは不良個体となり、CCDセンサーごと交換する必要があった。
CCDセンサーはカメラの中で最も高額な部品であり、さらに似たような部品での代替がきかないことから、深刻な問題になった。
時代は進み、ボンディングの破断という話は近年全く聞かなくなった。
ボンディングにワイヤー方式を使用しなくなったためだ。
しかし、超精密部品であるCMOSセンサーをダストリダクション機能と称して激しくブルブル震わせる動作は見ていて心配になる。
実際は問題ない構造になっているのだろうが、あえて機能として搭載していないカメラもいまだにある。
また、ニコンZ9やZ8では、電源OFF時に手ぶれ補正機構ごとCMOSを固定することで、外部からの振動により不必要に震えない仕組みになっている。
ダストリダクション機能不要論その2。
異物を振るい落とす方法としてCMOSセンサーを激しくブルブル震わせることは理解した。
だがその振るい落とされた異物はどこへ行くのか?
僕は割とよくCMOSイメージセンサーを自分で掃除する。
綿棒に無水エタノールを染み込ませて掃除している。もちろん自己責任で行っているため、他人様へ勧めるつもりは無い。
掃除する目的はひとつだ。
マウント内部に混入した異物を外部へ取り出す。
異物の付着場所がマウントのツメだろうが、電子接点部だろうが、CMOSイメージセンサーの表面であろうが関係なくフランジ内はすべて綿棒で拭き取っている。
CMOS表面の異物はマウント内部に混入した異物が偶然そこに付着しただけであり、CMOSカバーガラスの表面だけをキレイにしても、マウント内部に異物が存在していれば何かの拍子にそれが移動してまたCMOSの表面に付着するだけである。
掃除の目的は異物の除去であるため、CMOSの表面の異物を振るい落としても、それが確実に外へ排出されなければ意味が無いのである。
センサー面を下に向けて試したこともあったが、ほとんど意味が無い。
異物は空気中を漂っている場合もあるため、下に向けたところで効果的とは言えない。
撮影現場で応急処置としては使うこともあるかもしれないが、それはブロアで吹き飛ばしても同じである。
という訳で、ダストリダクション機能は不要である。