カメラメーカーによる色づくりについての話題を時折見聞きする。
キヤノンの色が好き、富士フイルムの色が好きといったように各社の色についての好みは写真撮影者により別れる。
自分の意図した色調にするため、RAWデータから現像されている方も多いだろう。
今回は、カメラによる色づくりはどのようにして行われているのかを3段階に分けた解説で記録する。
なお、僕はエンジニアではないので概要のみの紹介である。

3段階は下記のとおりである。
① CMOSイメージセンサーからの出力段階
② 画像処理回路での処理その1 画素欠陥補正とRAWデータ化
③ 画像処理回路での処理その2 JPEG画像化
③’ ユーザーによるRAW現像処理
順に解説する。
① CMOSイメージセンサーからの出力段階
レンズを通過して結合された光は、CMOSイメージセンサーのフォトダイオードが受光して電気信号に変換される。
その信号はCMOSイメージセンサーから画像処理回路へ出力される。
この時点ではカメラメーカーによる色づくりの処理はまだない。
僕のカメラはライカSL2-Sであり、CMOSイメージセンサーはソニー製のIMX410である。
ちなみに、IMX410は、ソニーα7III、ニコンZ6、ニコンZ6II、ルミックスS1、シグマfpなどに採用されている。
この時点ではこの6機種は全く同じデータであると言えるが、ライカSL2-Sは、ライカM型レンズ向けにCMOSのカバーガラスを薄くしている特注品らしいため、この影響による差異が生じている。
なお、この工程は料理に例えるとレシピを考案する工程と似ている。
IMX410からの出力データという共通の基本情報(レシピ)から各社がどのような料理(写真)にしていくのか、ここから各社の色付け処理(味付け)が始まる。
② 画像処理回路その1 画素欠陥補正とRAWデータ化
CMOSからLVDS出力された信号は画像処理回路(映像エンジン)に転送される。
ソニーならBIONZ X、ニコンならEXPEED、ライカならLEICA MAESTROなどである。
この画像処理回路で画素欠陥補正やレンズの歪曲補正などの最初の画像処理が行われる。
その後、RAWデータ化されるのだが、ここでRAWデータの構築方法によりメーカー(カメラ)による差異が生まれる。
多くの場合、RAWデータはTIFFファイルやBMPファイルに格納されるが、まだ画像化されていない。
そのためRAWは「RAW画像」とは表現せず「RAWデータ」と表現するのが正しい。
なお、レンズの歪曲補正を行わずにRAWデータ化するカメラもあるようだが、この場合は後ほどの工程にある現像ソフトウェアで補正しなければならない。
料理に例えると食材を用意する工程と言える。
③ 画像処理回路その2 JPEG画像化
RAWになったデータがJPEG画像化される工程である。
ここでようやく撮影されたデータが画像になる。
カメラの撮影モードにあるビビッドやモノクロなどのイメージフィルターが反映され、メーカーの色の特徴が大きく現れる。
その最たるものが、富士フイルムのフィルムシミュレーションやニコンのイメージングレシピであり、カメラやメーカーあるいはユーザーが意図した写真として仕上がる。
料理に例えると食品工場などで調理して作った料理と言える。
③’ ユーザーによるRAW現像処理
これは③を行わずに②のRAWデータからユーザー自身が画像化処理を行う工程である。
上記の③はカメラ側で設定したプロファイルのフィルター処理が適用されるのに対して、ここではユーザーが写真を一枚ずつPCのモニターで確認しながらソフトウェアで色やコントラストなどを調整して写真として仕上げる。
代表的なRAW現像ソフトウェアはフェーズワン製Capture OneやアドビLightroomがあり、僕は市川ソフトラボラトリーのSILKYPIXを使用している。
料理に例えると料理人が調理して作った料理である。

カメラやメーカーまかせの色を楽しむのであれば、富士フイルムのフィルムシミュレーションが面白い。フィルムによる色表現を設定で再現出来るため、様々な写真表現を楽しめる。
また、キヤノンは自社製のCMOSイメージセンサーを採用しており、しかもそれを外販していないため、上記の①の段階からより独自性のある色づくりをしていると思う。
どちらも自分の好みに合えば、唯一無二のカメラになると思う。
僕のライカSL2-Sは汎用のCMOSイメージセンサーを採用しているため凡庸な画質と思われがちだ。
しかし、映像エンジンであるLEICA MAESTROのRAWデータの作りの良さが気に入っているため、色表現に関しては不満はない。

僕は唐揚げを愛するカラアゲニストなので、よく自分で唐揚げを作る。
その日の気分により小麦粉にしたり片栗粉にしたり混合にしたり比率を変えたりする。
場合によってはニンニクを抜いたり、カレー粉を入れたり、ナツメグを入れたり等々の様々なアレンジをする。
当たり前だが、美味しい唐揚げを作るためにはテキトーなレシピでは駄目だし、状態が悪い食材は使わない。
すぐにいただきたいときは自分で作らずに店で買うこともあるが、どこでも良いわけではなく、お気に入りの店や評判の良い店を選んで買う。
一流の唐揚げ屋はこだわりのレシピと厳選した食材を使っているし、一流のカラアゲニストも自分が好きなレシピと新鮮な食材を使って唐揚げを作る。
最近のお気に入りはタコやエノキである。
一流のカラアゲニストは鶏肉に縛られない。

写真にも同じことが言える。
JPEG派でもRAW現像派でも、中級者以上の写真撮りであれば、一流のメーカーが長い年月をかけて培った知見から作り出されたカメラの中で、どのようなプロセスを経てデータが生成されるのか心得ておく必要があるだろう。
色づくりや味付けのプロセスの知識を持っていると、カメラや写真への理解がより一層深まるのではないかと考えている。
一流のJPEG派は自分が意図した色が出るメーカーのカメラを使い撮影環境や対象物によりそれぞれ最適なプロファイルを瞬時に使い分けるだろうし、一流のRAW現像派はプリセットのプロファイルに縛られない。