近年のカメラやレンズの価格が高い。
高すぎる。
皆様と同様、僕も感じてる。
2020年に発生したコロナ禍の前と後で、カメラ製品を取り巻く状況が輪をかけて変わっていったことは、思い出したくない出来事として皆様の記憶に残っていると思う。
さらに、その後に発生した円安により、カメラ製品の価格は今も上昇の一途を辿っている。
以前は、大量生産すれば安くなる、年月が過ぎれば安くなると言ったものだが、これらの現象は既に過去のものであり、もう二度と戻らない古き良き時代の記憶となってしまった。
今回は、カメラ製品の価格と、分割払いで買うことの是非について、2025年1月の情勢のもとで記録していく。
長く暗い記事なので、結論を先に述べる。
どうしても欲しいと思ったカメラやレンズがあったら、いますぐ買った方が良い。
まとまった購入資金がなくても、タイトルにある分割による是非を問うまでもなく、いますぐローンを組んででも買った方が絶対に良い。
絶対に。
いますぐに。
僕の初ミラーレスカメラはソニーのα7 IIズームレンズキットだ。
発売して3か月後の2015年5月に購入した。184,000円だった。
現在はこの二世代後継にあたるα7 IVズームレンズキットがあり、価格は本日現在で310,000円だ(価格ドットコム)。
なお、付属レンズが異なるが、α7C IIズームレンズキットは267,000円である。
随分と高くなったものだ。
そもそも、なぜカメラの価格がこのように高くなったのか。
これから述べることは、産業用カメラメーカーに勤務していた僕が実際に見聞きした事柄を僕なりに咀嚼した見解だ。
全てのメーカーがこのようになったわけではないと思うが、多くのメーカーにとっては、当たらずとも遠からずと言った所だと思う。
価格上昇の主な原因は3点。下記がこれ以上ない最悪のタイミングで重なったことが原因だ。
・スマートフォンのカメラ機能の高画質化に起因するカメラの販売減
・コロナ禍による半導体の供給不足と価格の高騰
・その後に発生した急激な円安
この中でも悪質なのが、コロナ禍による価格上昇である。2025年1月現在、コロナ禍による大きな混乱は終息しているが、半導体部品の状況については、今後もコロナ禍以前に戻ることは無い。
部品不足はほぼ解消されたが、コロナ禍以前の様に大量に過剰に生産されることがなくなったからだ。
必要な数しか生産されないため、大量生産すれば安くなるといった現象はもう発生しない。
コロナ禍で発生した半導体不足の問題の大枠は下記のとおりである。
はじまり:世界中で新型コロナウイルス感染症が流行しはじめた!
◇下請け半導体製造工場「新型コロナウイルス感染症を防ぐため、工場を閉鎖もしくは生産ラインを絞って操業します!」
→半導体部品の生産数量が激減。
◇元請け会社「それじゃ困るだろ!少しでもいいから生産しろ!」
◇下請け工場「生産量1/5ですが何とか作りました!しかし価格が5倍になってしまいました!この価格が嫌なら無理に買わなくてもいいです!」
◇元請け「やればできるじゃないか。大変だろうが継続して生産してくれたまえ。」
◇下請け『・・・値段を5倍にしても売れるなら、無理して今までのようにフルタイムで働いて大量生産をする必要はないな。このまま生産量は1/5で単価5倍を継続だ!そうすれば、売り上げはそのままで人件費も電気代もは1/5。つまりこの分だけ俺が儲かるな。ラクして儲かるのに今までのように朝から晩まで働いて大量生産なんかしないよ!』
部品価格5倍は決して大袈裟ではなく、中には10倍になった部品もある。
しかも納期が異常に長く、平気で52週間(1年)や99週間などと言ってくる。
元請けは、是が非でも部品が必要なため、下請けの言い値で買うしかなくなったのだ。
この影響は、ゲーム機器や自動車、ガス給湯器をはじめとした家電製品、果ては交通系ICカードなど幅広い業界に深刻な影響を与えたことは皆様も覚えておられると思う。
もちろん、カメラ業界も例外ではなかった。
カメラを注文しても、納期は数か月から半年待ちは当たり前、中には1年待ちや受注停止のまま生産を終了になった製品もあった。
皆が皆、僕を含め勤勉な労働者というわけではない。
世界的に見たらラクをして稼ぐと考える人の方が、むしろ多いのではないだろうか。
価格高騰の原因として3点挙げたが、残念ながら、カメラやレンズの価格が現在よりも下がる可能性があるのは最後に挙げた円安が解消された場合のみである。
コロナ禍の半導体不足は部品供給の遅延を発生させただけではなく、半導体の進化も停滞させた。
これまではカメラのモデルチェンジのペースは、エントリークラスとミドルクラスは約2年、ハイエンドやプロ向けは2年でマイナーチェンジ、4年でフルモデルチェンジと言った具合で更新されてきた。
現在はクラスに関係なく概ね4~6年程である。しかも、多くのメーカーが製品ラインナップを削っている。
暗い話が続いたが、この辺で一度、現在のカメラ販売の状況を整理する。
・カメラの価格は過去と比較して大幅に上昇し、以前のように時間が経てば安くなるといった買い方が出来ない
・人件費や原材料、燃料などの相場は上がり続けているため、カメラの価格は今後も上昇しつづける(つまり価格は今が一番安い)
・カメラのモデルチェンジは4~6年くらい
・円高が唯一の希望
断言するが、今販売されているカメラの価格は、この先を見通しても、いまが一番安い。
日により多少の誤差はあるかもしれないが、来月まで待てば5%くらい下がるかも、と言ったことは絶対にないし、セールになることもまずない。
買おうと思っているカメラやレンズがあれば、今すぐに買った方が良いし、もしかしたら、来月に価格改定(価格上昇)があるかもしれない。
「カメラのモデルチェンジは4~6年くらいなら、新型はもうそろそろかな、型落ちを狙うか」という考えも古き良き時代のオモイデだ。
新型が出るころには旧型は今までの価格のまま売り切れてしまっている。
たとえ、旧製品になったときまで残っていたとしても、新型は高いため旧製品の価格自体が相対的に安く見えるため、店側にとって値段を下げる必要がない。
「円高まで待つか!」と言う考えもあまり賛同できない。円安により価格が上がったのは、円安と騒がれてから数か月経過した後だ。為替の影響が価格に反映されるのはそれなりに時間がかかるし、もしかすると、円高が起こっても価格を下げないかもしれない。
それでは、どうすればよいのか。
予算が厳しいと思う方にお勧めなのは分割払いで買うということ。
現代のカメラの製品寿命が4~6年であることを考えれば、60回払いでも決して長い期間とは言えないのでこれを利用する。
一部店舗やキャンペーンなどを狙う必要があるが、60回ローンを無金利で組めるところがある。
毎月5000円を返済に充てても60回であれば、合計30万円となるので、頭金を入れればミドルクラスのカメラが買える。
月々7500円であれば45万円だ。頭金を少し用意出来ればニコンのZ6III 24-120 レンズキットやキヤノンのEOS R6 Mark II RF24-105L IS USM レンズキットが買える。
ローンが終わる5年後にはこのカメラの後継機種が出ているので、ローンが終わったそのカメラを下取りに出して、新型を5000円60回ローンでまた購入する手段もある。
カメラの価格が上がり続けるというのは、いま所有しているカメラの価値も上がり続けるということだ。
現代のミドルクラスのカメラの5年後の下取り価格は、次のローンの頭金として十分な額になるはずだ。
今までは、安く買える盆や暮れのボーナス商戦を狙う方も多かったと思うが、残念ながらもうこの買い方は出来ない。
そもそもカメラ自体がセールになることは稀であるし、ましてや目星をつけているカメラが特別価格になるということはほぼない。
シーズンによる店頭価格に大きな下落は無いと思った方が良いだろう。
しかし、そんな中でも希望はある。
メーカーが行うキャッシュバックである。
実際に安く買えるわけではないが、数万円のバックのアリナシは全然違う。
結論:カメラは分割払いで買う!
カメラの購入方法は大きく変わったのだ。
もちろん返せないローンは組むべきではないし、しっかりとした計画を立てる必要があるが、一括購入の予算がないからと言ってローン購入を検討せずに購入自体を諦めるのはもったいない。
「嗜好品をローンで買うなんて馬鹿げている」と言う方もおられると思う。
しかし、僕もそうだがカメラ中級者にもなると、カメラが人生の一部になっている人もいれば、趣味を通り越して生き甲斐になっている方も少なくないと思う。
嗜好品だからこそ、ローンで買う。
そのためにはローン完済までは自分で働かなくてはならないし、人生を続けなければならない。
正に生きる活力である。
カメラは人生だ!(ローンがあるから)
カメラは俺の生き甲斐だ!!(ローンがあるから)