イメージセンサーのサイズによる画質の差はあるのか

知見

結論から述べるが、CMOSイメージセンサーのイメージサイズは画質に影響しない。

正しくはCMOSイメージセンサーの画素サイズが画質に影響する。大きい方が明るく高感度撮影性能が高い画像が得られるためである。
今回はCMOSイメージセンサーの物理構造をもとに簡単に解説していく。

現在発売されているレンズ交換式カメラのCMOSイメージセンサーのイメージサイズは下記の4つが主流である。

・中判
・フルサイズ(ライカ判)
・APS-C
・フォーサーズ

一般的に上から順に画質が高いと言われている。
しかし、CMOSイメージセンサーの原理を理解するとイメージサイズと画質は関係がないことがわかるはずだ。

なお、CMOSの技術は多様に進化しており、画質の良さは画素サイズだけでは決めることは出来ず、A/D変換回路、裏面照射構造や積層型構造などにより差異が生じます。
あくまでも、同じ技術を持つCMOSイメージセンサー同士の比較となることを念頭に置いていただきたい。

CMOSイメージセンサーの構造は下記のとおりだ。

 フォトダイオードはレンズを通過した光を電気信号に変換する部位である。
フォトダイオードはより明るく受光するため、すぐ手前に配置されたマイクロレンズで集光される。
ちょうど、黒い紙に虫眼鏡で太陽の光を収集させて火をおこすことと同じ考え方である。

フォトダイオードの前にはベイヤーカラーフィルターとローパスフィルター、マイクロレンズの順に配置され、その上にそれらを保護するカバーガラスが配置されている。さらにその上に紫外線や近赤外線をカットする光学フィルターが配置されることもあるが、これらはカバーガラスに含まれる場合もある。

ここで重要なのはマイクロレンズの存在である。
フォトダイオードはマイクロレンズにより集光された光を受光する。
つまりフォトダイオードの面積いっぱいに受光出来るわけではないのである。

 そのため、画素数が大きい方が1画素あたりの受光面積が大きいのである。
冒頭に述べた「画素サイズが大きい方が明るく高感度撮影性能が高い」に繋がる。

すなわち、大切なことはイメージセンサーのサイズではなく、画素のサイズなのである。

下記は主要なイメージセンサーの画素サイズである。

中判サイズ 1億画素 画素サイズ3.76μm
フルサイズ 6100万画素 画素サイズ3.76μm(参考:ソニー IMX461)
フルサイズ 4400万画素 画素サイズ4.40μm(参考:ソニー IMX455)
フルサイズ 2400万画素 画素サイズ5.94μm(参考:ソニー IMX410)
APS-Cサイズ 2600万画素 画素サイズ3.76μm(参考:ソニー IMX571)
4/3サイズ 2000万画素 画素サイズ3.3μm(参考:ソニー IMX472)

同じ技術で設計されたメージセンサーであれば、中判の1億画素、フルサイズ6100万画素、APS-Cの2600万画素は横並びで同じ画質である。さらに4/3の2000万画素はこれらに近い画質であることが分かる。
つまり、「CMOSのサイズが大きければ画質が良い」のではなく「『同じ画素数であれば』CMOSのサイズが大きければ画質が良い」となる。

冒頭でも触れたが、技術は進化するため、高画素(=画素サイズが小型)化してもどんどん明るい画像を取得出来るようになっており、高感度撮影性能も向上している。

僕が最初に手に入れたレンズ交換式デジタルカメラはニコンD50だ。2005年に発売されたAPS-Cの600万画素(画素サイズ7.8μm)だが、現代のどのカメラよりも高感度撮影性能は悪い。